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古今東西の不思議なものを集めて展示するWEBアーカイバ・UNeCORN(ユネコーン)

格安の一軒家

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私自身がごく最近経験した実話です。

40歳になり、一念発起して家を買うことにしました。

まず、職場に近い多摩地区の、広めの中古住宅をいくつかピックアップしました。

その中でも広さの割りに格安でいい物件をチラシで見つけ、さっそく不動産の営業マン立会いのもと、内見させてもらうことにしました。 

その家は鉄筋3階建てで、図面によると、リビングも20畳以上の広さで、まさに私たち家族の理想の家、という感じでした。

ただ営業マンによると、すぐ近くに斎場があるのと、庭先すぐのところが緑地帯でちょっと湿気が多いのがマイナス査定となって価格が安いのだという話でした。

 

内見の日は、朝からどんよりと曇っていました。

そのせいか物件の前に立つと、どことなく気分が沈みました。

物件そのものは非常に立派な作りで、豪邸と言っていいものでした。

築10年以上建ってはいますが、築年月を感じさせない綺麗な家です。

 

それなのに……今から内見するというのに、気分が浮き立ってこないのです。

そんな私の気分が伝わったのか、私の後ろに立っている妻も、妻に抱っこされてる2歳の娘も笑顔がなく、どことなく落ち着かない様子です。

 

営業マンが玄関のかぎを開けて、私たちはその家にあがりました。

天気がよくないせいで、日当たりのよさは確認することができませんでしたが、電気をつけると室内は明るく、2階のリビングも想像以上にゆったりとしていました。

リビング脇のキッチンなど外国製のシステムキッチンが入っており、それは素晴らしいものでした。

 

そのキッチンを妻がよく見ようとして、抱っこしていた娘に「降りなさい」と言ったときです。

娘が急に泣き出しました。

どうしても妻の腕から降りようとしません。

「降りてよ」と声を荒げても娘は頑として聞きません。

仕方なく私が妻と抱っこを交代し、階段を3階に上がりました。

その間娘はじっと私にしがみついていました。

 

私はふと階段の上から手すりごしに、階下のほうを見下ろしました。

そのとき、あれ、と思いました。

 娘よりすこし大きい女の子が、下の階段の踊り場から私を見上げていたからです。

 

近所の子が入ってきたな、と思いましたが、私と目が合うと、その子はふっといなくなりました。

消えたように感じましたが、目の錯覚だろうと思いました。

 

3階からまた2階に下りると、私にしがみついていた娘がぶるぶる震えはじめました。

そして言うのです。

 

「お化けがいる」

 

と。

 

「どこにいるのよ」

と妻が聞くと、娘は、あそことあそこ、と言って、2階の出窓のある洋室と、階下の玄関を指差しました。

「大丈夫、何もいないよ」

と営業マンが必死で娘をなだめてくれましたが、娘は泣き止みませんでした。

 

と、妻が青ざめた顔で私にささやきました。

 

「あーちゃん(娘)が指差したところ、私も確かになんだかすごくいやな気がする

 

そう言われて、私もよく見てみましたが、別にどうということもありません。

ただ、さっきの子供は何だったのかな?と思い、妻に

「そういえば、さっきここに子供がいたよね」

と聞きました。

 

「見てない。でも玄関のところからさっき変な男が覗き込んでた」

 

と妻は不審げに答えました。

 

そのとき娘が

 

「いたよ。お姉ちゃん」

 

と鼻をすすりながら言いました。

娘は泣き止まないし、妻は気分が悪くなるしで、内見もそこそこに、私たちはその家の外に出ました。

次の瞬間、私たちは一瞬全員言葉を失って立ち尽くしました。

玄関の目の前の地面に包丁が突き立っていたのです。

さっきは、そんなもの確かにありませんでした。

「たちの悪いいたずらをするやつがいますね」

と玄関にかぎを掛けながら営業マンが言いました。

やはりいたずらだろう、私もそう思いました。

と、妻がいきなり悲鳴をあげました。

妻は、例の気持ちがわるいと言った2階の出窓のほうを振り返って凝視しています。

 

部屋の中に女の子がいて、窓ガラス越に私たちを見下ろしていました。

その子の顔には全く表情がありませんでした。

 

私たちは営業マンと別れ、その足で、近所で評判の、いわゆる霊能力者といわれている人の所に行きました。

なんといっても物件の破格と言っていい価格と広さ、駅にも近いことなどにやはり未練があったのです。

 

霊能力者の人に、私は

「家を買いたいのだけれど、いい物件かどうか見てほしい」

とだけ言いました。

 

私の車で現地に着いた彼は、物件をひとめ見るなり言いました。

 

「玄関のところに一人、男性がいますね。あと、あちらの出窓のところに・・女の子だね。幼稚園くらいのこっちを見てるね。あと、中にも一人いるよ。皆、来てほしくないらしいね。強く拒絶してるよ。率直に言わせていただくけど、あんまりお勧めしないね。こういうところに無理やり住むと、よくないことが起こると思います」

 

その霊能力者の言葉もあって、結局私たちはその家をあきらめました。

 

営業マンに断りの電話を入れてから、1週間後その家を再び見に行きました。

家の外から、2階の出窓を見ると、やはり女の子が無表情にこちらを見ていました。

私たちはすぐその場を立ち去ったのですが、私も妻も、直後からひどい頭痛に襲われて、数時間苦しみました。

それからしばらくして、新聞の折込チラシで、その物件の値段がさらに下がったのを知りました。

 

さらに後日わかったことがあります。

営業マンが売主から聞いた話として教えてくれたことです。

その家を建てる前に、その土地にあった稲荷を壊して埋めたというのです。

関係あるのかどうかわかりませんが、嫌なエピソードだと思いました。

 

そして今日、その物件を懲りずにまた見てきました。

今回はあの家、誰か買い手がついたのかなという、全くの好奇心からです。

その家はまだ売れている様子はありませんでした。

 

そして、出窓には相変わらず女の子がいました。

 

さらに、私も妻も以前より強い頭痛に教われました。

もうあの家は見に行ってはいけない、と心底思い知りました。

 

(了)

 

引用元:

毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか『中に入れて』『ある物件に住む女の子』 他 | 不思議.net | 怖い話やオカルトのまとめサイト