狸の夢
現在進行中の怖い話…なのか。
家族の中で伝染していってるからこれを読んで伝染したらスマン。
妹が帰り道に怖いものを見たという。
それは道路の反対側、もう潰れた会社の車庫の前にぽつんと置かれた狸の置きもの。
あのお腹が膨らんでてなんか持ってるやつ。
大きさはそんなにない。ペットボトルぐらいのサイズ。
だが何故かそれと目が合ってしまう。
「どんなに逸らしても駄目。あいつ絶対こっち見てた。暫く動けなくなった」
それ以外に怖いことがあったかと言えばそんなことはない。
ただ妹は不気味な人形に遭遇しただけ。
その人形と目が合ってしまっただけだ。
だがその話を聞いた私に、妙なことが起こった。
その日の夜、珍しく夢を見たのだが、夢の中で私は狸を殺していた。
何か刃物を振りおろし、狸の身体をずたずたに裂いていた。
首を落としたが狸は死なない。首だけになっても襲い掛かってくる。
だから私は何度も何度も何度もその狸の頭を踏み潰していた。
気味の悪い夢を見たが、
ただでさえ実際にその狸の置物と目があってしまったとビビってる妹にそんな話は出来ない。
夢はその日の夜だけだったし私はあまり気にしないでおいた。
妹もそれ以来、その道は通らなかった。
「動けなかったのが何より怖い。
途中、メールが来なきゃ私は多分ずっとその狸を見続けていた気がする」
それから数日。母から連絡があった。
「あんたたち、妙な場所に行った?」
何でも最近妙な夢を見るのだという。
(母には霊感がある。割と強く一時期は無料でお祓いみたいな事もしていた。と言っても知り合いがそういう事で悩んでいたら相談に乗って、悪いものが遠ざかるように仕向けたりって程度だったが。)
「どんな夢?」
「なんか、狸が悪さしてるんだよね。
あれは駄目。絶対良くない。
あと置きものが見えた。
どっかの工場の倉庫だがかの前にぽつんと立ってるの。
あれが睨んでる。
分かる?ほら良くある狸の置きもの。
あんたたちが住んでる場所から~~~
(此処で妹がそれに遭遇した場所に近い場所を言い当てた)」
私は妹に相談してから妹が遭遇した話と夢の話を話した。
母は「ああやっぱり」と頷いて妹に代わるように言った。
母から妹には暫くその道には近づかないこと。
いつものように仏壇に供えた塩をお守り袋に入れて持ち歩くようにと言っていた。
あと夢を見た私にも母は同じように仏壇に置いた塩を枕の下に入れて寝れば多分大丈夫。
ただ絶対興味本位でその場所には近付いちゃ駄目。
多分向こうはあんたたちに興味を持ってる…と思う。
(断言しないのはここ数年で母の力はすっかり衰えてしまっているから。なんでも最後に乗った相談でほとんど力を持って行かれてしまったとか。)
「気にしないのが一番だけど、なんか妹は絶対呼ばれてる気がする。
何かしら理由を作ってもう一度自分の所に来させようとするはず。
だから絶対近付いちゃ駄目だよ。
何があるか分からないからね」
近付いたら死ぬ、までの事は無いと思うがとは母は言っていたが、私も妹も怖い思いなんてしたくない。
なので今は母に言われたことを二人で守っているが今日、帰ってきた妹が真っ青な顔で言った。
「あの道を通らないようにって使ってた道で事故があったんだ。
なんか、人が死んだっぽくて。
どうしよう、すっごい怖い。
なんでも繋げるのは良くないって分かってるけど、
やっぱりあの狸のことが気になっちゃうんだよ……」
何より嫌なのは私たち家族は全員動物好き。
狸も勿論好きでネットで画像や動画を頻繁に見る程度には好きだ。
なのに最近狸を見るとあの置きものが出てきてしまって気分が落ち込む。
例のじぶりのアニメも当分見れなさそうだ。
今夜、また狸を殺す夢を見ないことを祈る。
(了)
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